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本年4月19日に、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下、本法案)が閣議決定され、国会に上程されました。4月27日、こころの健康政策構想実現会議(以下、実現会議)の運営会議にて、本法案について議論され、実現会議としての考えについてまとまりましたので、以下に述べたいと思います。
まず、本法案に至る過程で、国会議員の皆様、厚生労働省職員の皆様、実現会議とともに活動していただいた皆様をはじめとするすべての個人・団体の関係者の皆様方のご支援によって、本法案が国会に上程されましたことを心より感謝申し上げます。
本法案は、保護者制度およびそれに関連する義務規定を廃止し、精神科病院の管理者が退院後の生活環境についての相談支援体制を整えること、地域援助者との連携、退院促進のための体制整備を義務づけ、厚生労働大臣による指針の策定を義務づけたという点で大きな前進であると考えます。
しかし、本法案では医療保護入院については家族の同意が要件となり、家族に大きな負担を課すことには変わりありません。家族は、当事者の最も身近で、最大の理解者であり、支援者ですが、家族の同意はその関係を壊します。次回の改正で、家族の同意による入院制度が廃止されることが必要であり、家族へ十分な支援が提供されることも義務づけるべきだと考えます。
さらに、本法案では、当事者の権利擁護の仕組みも改善されませんでした。次回の改正で、措置入院と同様に、病院外の精神保健指定医による入院決定の仕組み、行政機関の職員による診察の立ち会いを義務付けることが必要だと考えます。また、家族以外の第三者による権利擁護の実行可能な仕組みを早急に検討し、次回改正に盛り込むべきだと考えます。
今後、厚生労働大臣による指針の策定について、検討会が設けられると思われますが、その際は、従来の専門家・利益関係者中心の会議ではなく、当事者・家族を含めた会議を義務付けるべきです。また、実効性のある指針とするため、診療報酬の改訂を働きかけていくこと、権利擁護の仕組みを検討するための試行事業などを可能とするための予算確保が必要です。
実現会議の前身である、こころの健康政策構想会議は、平成22年 4 月に発足しました。今までの日本にはなかった、「当事者や家族」と「精神保健・医療・福祉の専門家」が、同じ立場で参加する政策提言会議で、「“こころの健康推進”を日本の基本政策に」と訴えました。「こころの健康」は、病気をもった方だけでなく国民すべての願いであり、社会の基盤をなす大切な課題です。平成22年7月に発表した提言には、①当事者・ご家族をはじめとする国民のニーズにもとづいた総合的な提言であること、②国民全体にとっての提言の意義を明確にしたこと、③当事者・ご家族・専門家が共同して同じ立場で作成したこと、以上の 3 点が非常に画期的でした。
こころの健康政策構想会議が発足して3年が経ち、精神疾患が5疾病5事業化に加わったこと、超党派の国会議員による「こころの健康推進議員連盟」の発足、人口約1億人をカバーする地方議会での「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の立法を望む意見書採択、など実現会議が目指す「“こころの健康推進”を日本の基本政策に」着実に前進しております。本法案もその一つになると評価しております。
平成25年5月8日
こころの健康政策構想実現会議
共同代表 伊勢田堯 岩成秀夫 大野裕 岡崎祐士 小島卓也
西田淳志 野中猛 福田正人 堀江紀一 増田一世
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